2024年12月01日
こんにちは、院長の前川です。矯正治療を検討される方から、「大人と子どもでは矯正治療にどのような違いがあるのですか?」という質問をいただくことがよくあります。歯並びを整えるという目的は共通していますが、実際の治療方法や考慮すべき点には違いがあるんです。今回はその違いについて、分かりやすくお話ししたいと思います。
1. 成長の有無が大きな違い
子どもの矯正治療と大人の矯正治療の最大の違いは、成長期であるかどうかです。子どもの場合、顎や歯列はまだ成長途中で、矯正治療を通じて成長を活かしながら理想的な歯並びや噛み合わせに導くことができます。一方で、大人の場合は成長が完了しているため、歯や顎の骨の位置を動かすためには力のかけ方に工夫が必要です。
具体的には、子どもの矯正では顎の成長をコントロールする装置(拡大装置やヘッドギアなど)を使用することが多いですが、大人の矯正では主に歯を動かすことが治療の中心になります。この違いが治療計画や期間に影響を与えます。
2. 抜歯の必要性
子どもの矯正治療では、顎の成長を活用して歯を並べるスペースを確保することができるため、抜歯が必要になるケースは比較的少ないです。例えば、拡大装置を使用して顎の幅を広げることで、永久歯が自然に並ぶためのスペースを作り出すことができます。
一方、大人の場合は顎の成長が止まっているため、限られたスペースの中で歯を動かさなければならず、抜歯が必要になることが多くなります。特に重度の不正咬合の場合や、前歯を後方へ引っ込める必要がある場合には抜歯が検討されることが一般的です。
3. 骨の柔らかさと治療期間
子どもの骨は柔らかく、歯の移動が比較的スムーズに進むため、治療期間が短くなる傾向があります。また、骨の適応力が高いため、治療後の安定性も高いと言われています。
一方で、大人の骨は硬く成熟しているため、歯を動かす際には少し時間がかかることがあります。また、治療後に歯が元の位置に戻る「後戻り」のリスクも高くなるため、保定装置(リテーナー)を長期間使用する必要があります。
4. 健康状態や既往歴
大人の矯正治療では、歯や歯茎の健康状態が重要なポイントになります。歯周病や虫歯がある場合、それらを治療してから矯正治療を進める必要があります。矯正治療中に歯周病が進行すると、歯を支える骨が弱くなり、歯を動かすことが難しくなる場合もあります。
一方、子どもは歯周組織が健康なことが多く、この点での制約は少ないと言えます。ただし、むし歯が多い場合や口腔衛生が悪い場合には、矯正治療を始める前にこれらの問題を改善することが求められます。
5. 心理的な側面
大人と子どもの矯正治療には、心理的な違いもあります。子どもの場合、親御さんのサポートが大きな役割を果たします。治療を理解し、協力することが難しいお子さんもいるため、親御さんの励ましやフォローが欠かせません。また、治療を進める中で学校生活や友達との関係に気を配ることも大切です。
一方で、大人の場合は自身の意思で治療を決めるため、治療へのモチベーションが高い方が多いです。ですが、仕事や生活の中で装置が気になることや、見た目に対する不安がある場合もあります。そのため、見えにくい装置(リンガル矯正やマウスピース矯正)が選ばれることが多いです。
6. 矯正治療のゴール
子どもの矯正治療のゴールは、単に歯並びを整えることではありません。成長を利用して、将来的に健康な噛み合わせや歯並びを作り出すことを目指します。一方で、大人の矯正治療では、見た目や機能性の改善を主な目的とし、現在の状態をどれだけ改善できるかがポイントになります。
おわりに
大人の矯正と子どもの矯正には、それぞれ異なる特徴やアプローチがあります。どちらも適切なタイミングで、適切な治療を受けることが大切です。「子どものうちにやっておけば良かった」「今さら遅いのでは」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、矯正治療に遅すぎるということはありません。
もしお子さんの歯並びやご自身の噛み合わせについて気になることがあれば、ぜひ一度ご相談ください。それぞれの状況に合わせた最善の治療プランを一緒に考えさせていただきます。