2024年12月11日
こんにちは、院長の前川です。矯正治療を進める中で、時々耳にする「舌癖(ぜつへき)」という言葉について、患者さんから「それって何ですか?」と質問をいただくことがあります。舌癖は、矯正治療に大きく関わるだけでなく、日常生活や健康にも影響を与えることがある重要なテーマです。今回は、舌癖の原因や影響、対策について、人間味を大切にした視点で分かりやすくお話ししますね。
舌癖とは?
舌癖とは、舌の動きや位置が正常な範囲を逸脱し、噛み合わせや歯並びに悪影響を与える状態のことを指します。本来、舌は上あごの天井部分(口蓋)に軽く触れた状態で休んでいるのが理想的ですが、舌癖がある場合、舌が前歯や横の歯に押し付けられたり、常に下あご側に位置したりすることがあります。
特に、飲み込みや話し方などの動作中に舌が不適切な動きをすることで、歯や口腔内全体に影響を及ぼすことがあります。これが、矯正治療中や治療後の結果に関わってくるのです。
舌癖が生じる原因
舌癖の原因はさまざまですが、いくつか代表的なものを挙げてみます。
幼少期の習慣
長期間の指しゃぶりや哺乳瓶の使用が、舌癖の一因となることがあります。これらの習慣が続くと、舌の位置や動きが自然と乱れることがあります。
口呼吸
口呼吸が癖になると、舌が正しい位置を保てなくなることがあります。鼻で呼吸することで舌が口蓋に正しく当たる状態が維持されますが、口呼吸では舌が低い位置に落ち着いてしまうことが多いのです。
噛み合わせの異常
出っ歯や受け口、開咬(上下の歯が噛み合わず隙間が空く状態)などの噛み合わせの異常も、舌癖の原因になることがあります。逆に、舌癖がこれらの問題を引き起こす場合もあります。
筋力の不足やバランスの問題
舌や口の周囲の筋肉が十分に発達していない場合、舌癖が生じることがあります。筋肉のバランスが取れていないと、舌の位置が安定しません。
舌癖が引き起こす問題
舌癖は、以下のような問題を引き起こす可能性があります:
歯並びや噛み合わせへの影響
舌が前歯を押し続けることで出っ歯や開咬を助長し、矯正治療後の歯列の安定を妨げることがあります。
発音への影響
舌癖によって「サ行」や「タ行」の発音が不明瞭になることがあります。特に子どもでは学校生活やコミュニケーションに影響を及ぼすことがあります。
口腔内の健康問題
舌癖に伴う口呼吸が原因で、口腔内が乾燥し、虫歯や歯周病のリスクが高まることがあります。
舌癖を改善するために
舌癖は、矯正治療の結果を左右する重要な要素です。そのため、以下のような対策が取られることがあります:
MFT(口腔筋機能療法)
MFTは、舌や口の周りの筋肉を正しい位置や動きに改善するためのエクササイズです。専門家の指導のもと、舌癖を改善するためのトレーニングを行います。例えば、「舌を口蓋につけたまま飲み込む練習」などが行われます。
舌のリハビリ
歯科医師や言語聴覚士が、患者さん一人ひとりの状況に合わせたリハビリを提供します。家庭でも簡単に取り組める方法を指導することがあります。
噛み合わせの調整
矯正治療によって噛み合わせを改善することで、舌の位置が安定する場合もあります。矯正治療と舌癖改善を並行して行うことで、より良い結果を得ることができます。
生活習慣の見直し
口呼吸や姿勢の悪さなど、舌癖に関連する習慣を見直すことも重要です。例えば、鼻づまりがある場合は耳鼻科で治療を受けることが勧められます。
舌癖と矯正治療
矯正治療を成功させるためには、舌癖の改善が欠かせません。舌癖が残ったままだと、矯正治療後に歯が元の位置に戻る「後戻り」が起こりやすくなります。そのため、矯正治療を始める前や治療中に舌癖を評価し、必要な対策を取ることが重要です。
舌癖は改善できます
舌癖があるからといって、諦める必要はありません。適切な治療とサポートを受けることで、多くの方が改善に向かっています。私たちは患者さん一人ひとりの状態に寄り添いながら、最善の方法を提案します。
もし舌癖や矯正治療について気になることがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。一緒に健康的で美しい笑顔を目指していきましょう!